取材や仕事先で出会った素敵な人、素敵な場所、素敵な時間。
心の中だけにしまっておくのはもったいない!
熊本のとっておきを、ミューズの視点でご紹介します。


第一回 豊永酒造(球磨郡湯前町)

第1回は、県南の球磨地方で、風土に根ざしたこだわりの米焼酎を造る豊永酒造です。

どこまでも
頑固で正直な焼酎づくり


  熊本市内から南へ車を走らせること、およそ2時間。くま川鉄道の終着駅のあるのどかな球磨郡湯前町に、豊永酒造があります。1894年(明治27年)に創 業されてから115年。4代目にあたる豊永史郎社長は、豊永蔵の伝統を守りつつ、頑固なまでに『球磨の米、球磨の水、球磨に根ざした人による焼酎造り』を 行っています。
  ところで、球磨地方ではなぜ米焼酎が造られるようになったのか、ご存じですか? 肥沃な土地と、盆地特有の寒暖の差の激しい気候、清冽で豊かな水に恵まれ た球磨地方では、古くから稲作がさかんだったそうです。そこへ、朝鮮半島から焼酎の製法が伝わったのが16世紀。豊かな米の産地であった球磨では、米焼酎 が造られ始めました。ちなみに、鹿児島で芋焼酎が造られるようになったのは、もっと後のことだそうです。
  球磨地方は周囲を険しい山々に囲まれていることから、ガラ・チョクといった独特の焼酎文化も生まれ、脈々と受け継がれてきました。現在、人吉・球磨地方に は豊永酒造を含め、28の球磨焼酎の蔵元が点在しています。人口あたりの蔵の数は、日本有数だそうです。「球磨焼酎」という言葉は、コニャックやスコッ チ、シャンパンなどと同じように、地名をブランドとして使用できる数少ないブランドです。

球磨の自然を表現する
焼酎を造りたい


   「焼酎造りでいちばん大事なのは、原料だと考えています」と語る豊永社長の言葉には迷いがありません。実は豊永酒造では、焼酎造りに使用する米は、すべて 地元・球磨の契約農家のEM農法の米だけを使っています。つまりトレーサビリティー100%。産地偽装や食品偽装などがニュースになるなか、これってすご いことです。また、焼酎の価格に対する原材料のコストを考えると、普通の企業だったら絶対できない。焼酎造りに対する確固たる信念があるからこそ、できる ことなんですね。
  焼酎の仕込みにはかなりの体力や手間がかかりますが、豊永酒造ではこれをほとんど手作業で行っています。あえて機械に頼らない、昔ながらの手法のため、杜 氏たちの人の手や長年の経験が頼りです。だからこそ、焼酎の味や風味に信念みたいなものが表現されます。球磨で生きる人々がその豊かな自然や恵みに感謝 し、球磨の自然を表現する焼酎を造る。これこそ、豊永酒造のブランドと言えるのかもしれません。

豊永酒造HP
http://toyonagakura.sakura.ne.jp/index.html

豊永のブログ
http://toyonagakura.blog85.fc2.com/

  今年春から熊本駅ー人吉駅間をSL人吉が運行。人吉駅からくま川鉄道に乗り換えて湯前駅へ。列車の旅も、また楽しい。
豊永酒造

豊永社長

豊永蔵